マンガの脚本概論
マンガのArtistic Impressionとは何か。マンガの構築を行うときに大切な基本は何か。竹宮は2000〜2013まで脚本概論の授業でマンガを組み立てて作品にするまでの基本作業を学生たちに説いた。初期5年分の成果を教科書として制作した本。授業の録音から中心部分を起し、さらに竹宮が不足を付け加えた。マンガに特化した脚本の教科書がなかったため、「マンガの」という文言をタイトルに加えた。
「機能マンガ」のすすめ
マンガの基本を守ることは、子供から老人までを読者とするために必要なこと。最先端のマンガ技術はリテラシーの高いマンガファンには適合しているが、マンガを年中読んでいない、マンガをよく知らない層には読みづらい。「マンガは難しい」と言われる所以である。本来は万人向けであったマンガが、高度なリテラシーに則して発達したために、万人向けに守るべき鉄則を忘れた結果なのかもしれない。
原画’(ダッシュ)研究
マンガの原画は長い期間の展示に向かない。2週間の展示ですら色が褪せる。それは竹宮が20年にわたって行ってきた個展から得た経験だ。多くの美術館では、原画を展示することのみを価値としており、竹宮が推奨する原画ダッシュの展示では美術館にふさわしくないと言われてきた。しかし原画のアーカイブのため、海外への展示供出のためにも、この研究は重要である。
『機能マンガ』の授業
「機能マンガ」は竹宮の造語である。一般には実用マンガ=Functional Story Mangaと称されるものだが、竹宮は機能マンガをSociability practice Manga (社会性実用マンガ)として区別したいと考える。「マンガの機能を駆使して、社会的に公平な表現を使い、可能な限りの真実を伝える」ことを目的とする。マンガを構築する前に、「目的と態度」を十分に考察することが肝要だ。
Asbestos Crisis
アスベスト問題は世界的にも大きな社会問題である。日本では国賠訴訟も起きる中、神戸大学と京都精華大学の大学院生は、共にマンガを使ってこの問題を広く社会に浸透させるため、プロジェクトを立ち上げた。その試みは初めてのことだったため、長い時間を必要とした。この小冊子はその後に新たに作られた「震災とアスベスト」である。
『石の綿〜マンガで読むアスベスト問題』
神戸大人文学研究科との2年にわたるプロジェクトの結果、京都精華大学マンガ研究科が神戸大が望んだマンガでの研究報告を実現。アスベスト被害が起こった尼崎市に隣接する神戸大が、長年にわたって蓄積した膨大な資料を読み解いてマンガ化を計画。京都精華大学はアスベスト被害を学ぶところから始めて、マンガ化を実務担当した。
マンガで読み解くマンガ教育
教育とマンガ。かつてはとても結びつくと思えなかったものが結びついて、2000年、初めて大学にマンガ分野が導入された。そこから10年が経ち、「京都精華大学に根付いたマンガ教育とはどんなものか」を検証・研究した報告。6人の研究者(人文学3名、マンガ学3名)が共著する。人文学から見たマンガ教育の言語化が珍しく、おもしろい。
マンガ/漫画/ MANGA 人文学の視点から
マンガの専門コースを持たない大学にも、マンガを研究対象と考える研究者は数多くいる。2019年3月、それを証明するかのようなシンポジウムが開催された。神戸大学大学院人文学研究科70周年記念事業キックオフ・イベントとして行なわれた、「 MANGA」ー人文学研究の新展開―である。